44 霧と枯葉
 11月8日(土)早朝、埼玉県南部は霧の中、川の土手では散歩する中年夫婦の姿が多い。犬の散歩の人もいる。オートバイに跨って霧中、ライトを点けて走る。大会会場の小学校のグラウンドに到着、なんともう会場ホームチームの指導者たちがグラウンド整備をしてネットを張り、白いラインを引いてブラシをかけていた。ご苦労様です。
 霧と言えば思い出す、何故ロンドンは霧の都なのだろう?疑問を持つとすぐ調べる、たいした取り柄も無いけれどこれが知識の源泉だと思っている。ロンドンは北緯50度あたりに位置するので、日本から見ると相当北部に位置することになる。日本は北緯20度〜45度、東経122〜153度の中にある()から北海道の最北端よりもっと北だ。通常時で日本との時差は9時間あり、日本が+9時間だから現地の深夜0時が日本の午前9時となる。ただしイギリスではサマータイム制を導入しているので、3月最終土曜日の翌日から10月第四土曜日の翌日までは時差が8時間となる。サマータイムの終った11月、朝8時でもまだ外は真っ暗だ。通勤,通学の人たちはこの暗闇の中を歩いている。北大西洋海流と呼ばれる暖流が、暖かく湿った空気を運んでくるので、ロンドンの冬季は霧が発生しやすくなるものの連日霧が発生するということはない。そもそも、霧の都として有名になったきっかけは18世紀半ばのこと。産業革命が始まって、石炭を燃やしてできる煤煙が街をすっぽり包み込んで いつももや〜っと霧深かったと言う。霧というよりは、むしろスモッグである。
 折角だから霧について勉強しよう。何故霧が発生するか?というのは空調会社の人ならジョーシキである。これが仕事の一部の要素だから。雨の降ったあと、急に気温が下がったときなどに、発生しやすいようで、水分を多く含んだ状態の空気が冷えると相対湿度が上がり、やがて露天温度に達すると湿度100%で結露し、水の細かい粒が見えるようになる。光が水に当たって乱反射するから視界が白くなる。霧の名所の一つは「山」。ふもとから見たら雲であっても、山では霧である。「森田さんのお天気ですかァ」というホームページによると、富士山では1年間に平均で212日も霧がかかる。軽井沢も霧の多い所で、こちらは年間に134日くらい。海沿いでも霧の多い場所があり、北海道の釧路や根室は、夏場はひと月の半分以上が霧に覆われる。加湿器の煙は、小さな水滴で、霧と同じものである。では「靄(もや)」と霧はどう違うのか?気象では視程によって区別されており、1キロメートル以上先まで見えるときは「もや」、1キロメートル未満の時は「きり」と言うそうだ。霞は気象では使っておらず、霞ヶ関は霧の中、なんちゃって(^-^)。
 ロンドンはテムズ川を観光船が往来し、各種の人種が雑多に行き交う。レストランではインド人のウェイター、中国人のコック、東南アジア人のお掃除係。見事にハイアラーキシステムが構成される。ドックランドはちょうど東京で言えばお台場だ。紳士淑女の街、落ち着きを感じる都市である。

1991年11月27日 ロンドン、はしけの浮かぶテムズ川の向こうにウェストミンスター寺院と時計台ビッグベンが見える

パリの展示会場にて 1991年11月19日
計器を展示してくれているブースに立ち寄り挨拶
説明員の女性と記念写真

パリのムーランルージュの劇場前にて。案内係の若い男性と記念写真

 昼少し前、少年野球会場から会社へ向かった。道路の混雑を避けて秋ヶ瀬公園の中をHONDA・CBは快調に走る。銀杏の黄色や紅葉(もみじ)の赤が鮮やかだ。公園内はスポーツを楽しむ人、バーベキューの人などがたくさんいる。会社に着いたら隣の会社の柿の木から枯葉がたくさん落ちている。掃除しなければならない。枯葉と言うと昨週は
   ♪枯葉散る 夕暮れは  来る日の寒さをもの語り  雨に壊れたベンチには  愛をささやく歌もない♪
であったが、落ち葉を見ていたら別の歌が脳裏に浮かんできた。
   ♪落ち葉の舞い散る停車場は、悲しい女の吹き溜まり、だから今日も1人、明日も1人、過去から逃げてくる♪
 奥村チヨのヒット曲で「終着駅」という歌だ。きれいに色づいた落ち葉が風に舞い、足元に積もった落ち葉がカサカサと乾いた音を立てる。過去に決別して歩き出す女は、乾いた風の中を、うつむきながらコートの襟を立てて、コツコツとヒールの音を残して行くのであろう。

 シャンソンと言えば「枯葉」を思い浮かべる。街路樹と枯れ葉はパリの代名詞。パリと言えば花の都。春に街路を花で飾り、夏、涼しい葉陰を落とし、秋、枯れ葉となって道行く恋人たちの足元でさざめく。パリ市内の街路樹は8万9000本。毎年9〜12月の間、枯れ葉が舞う。街中を流れるセーヌ川と聞くとなんとなくロマンチックな気分になるが、そんなにきれいな川ではない。ただ芸術の都であり、有名なルーブル美術館がある。「新聞くれ」のようなフランス語を窓口で言って地下鉄の回数券カルネを買って歩き回る。モンパルナスのカフェでコーヒーを飲んで、フレンチカンカンの発祥の地、ムーラン・ルージュの踊り子を見て、存分にショーを楽しんだ。庶民の街モンマルトル近辺も悪くない。地下鉄アンベール(anvers)駅の一帯は、スーパーや安売り衣料品店などが立ち並び、道端でとうもろこしを焼いて売っている。とにかくパリの地下鉄は便利で、標識・案内板の文字が大きくて分かり易い。そしてなんと駅の自動改札機の上をヒラリと飛んだ若者を見た。すごい軽業!日本のような自動改札機ならば飛ぶのも簡単だが、人の背丈ほどもあるガードが付いているのに、なんとまあ。ドイツのミュンヘンでは改札口に人を通せんぼする自動改札機が無い。オープン、フリーパスのようだ。ところが街路駐車のパーキングチケットメーターのようなのが立っていて、そこに切符を通す方式の自動改札だ。一人ぐらいズルする人間がいるだろうと物陰からしばらく見ていた。なにしろ誰も監視しているわけではないのだ。ところが!なんと皆がみな、キチンと切符を買って改札機を通して行くではないか。なんというモラルの高さ!パリと比べて国民性の違いがわかろうというものだ。話に聞くとローマはこの正反対だそうで、用心していても危ないらしい。
  日本経緯度原点
 東京都港区麻布台2丁目18番1。ロシア大使館の広大な敷地の裏手にある。大使館のまわりは警官が多く、かなり物々しい警備雰囲気だが、身に覚えのない人は安心して大使館の東の道を南に入って行こう(^-^)。看板が出ているので、すぐに分かるが、花崗岩の台座の中心に、金属標がはめ込まれており、この十字の交点が、日本経緯度原点である。東経139度44分28秒8759、北緯35度39分29秒1572、ここにはかつて、東京天文台(現:国立天文台)の「子午環」が置かれていた。
(2003年11月9日)

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